日経パソコン 1997年7月14日号記事

「ビジネスプレゼンツール」


              (注:原文のため多少内容が異なります。図は省略します。)



Windows95の発売により沸騰したパソコンブームもここにきて一段落した様子だが、パソコンを使ったプレゼンテーションに関連する市場は熱い闘いの最中である。パソコンを使ったプレゼンテーションは、DTPR(Desktop Presentation)と呼ばれ、10年ほど前から先進的なユーザーが実践しているが、特に、ここ1、2年はパソコン画面を液晶プロジェクターで直接投影するオンラインプレゼンテーションが定着しつつある。これに対して、従来のスライド、OHPフィルムを使ったオフラインプレゼンテーションは減少傾向にあり、特にスライドによるプレゼンテーションは学会発表など一部の用途を除き、ビジネスユースで使われるケースは非常に少ない。
また、インターネットを利用したプレゼンテーションも利用され始めている。この場合、インターネットのブラウズ画面を、液晶プロジェクターにより直接投影してプレゼンテーションする方法が一般的である。インターネットでのホームページの公開は、まさに発信者のプレゼンテーションそのものであり、WWWの発達により、インターラクティブなプレゼンテーションがオンライン上で可能になった。この、インターネットプレゼンテーションをサポートするソフトウエアも続々と登場している。プレゼンテーションソフトにアドオンする形式のものが多いが、例えば、マイクロソフト社のパワーポイント・インターネット・アシスタントでは、パワーポイントで作成した画面を、簡単にHTMLファイルに変換できるので、容易にWebページを作ることが出来る。インターネットを利用したプレゼンテーションのメリットは、何といっても膨大なデータを自由に検索出来ることだろう。自分のホームページだけでなく、関連するホームページからデータを自由に引き出してプレゼンテーションすることも出来る。現在では、PHSによる接続も開始され、客先でのインターネットプレゼンテーションも可能になった。ただし、ダイアルアップ接続では回線の接続スピードが遅く、あまり実用的とは言えないが、いずれプレゼンテーション会場に専用線が引かれていることが常識になってくるだろう。

次に、プレゼンテーションに利用されるツールの動向を見てみよう。ここでは、プリンター、スキャナー、デジタルカメラ等のパソコン周辺機器も、プレゼン資料制作には欠かせないものなのでプレゼンツールとして解説する。
初めに、プレゼン資料制作に欠かせない入力機器は、従来のスキャナーに加えてデジタルカメラの台頭が著しい。スキャナーでは、フラットベットタイプの他に、安価なフィルムスキャナーが出揃ってきた。ネガ、ポジフィルムから1200dpi以上の高解像度でスキャン出来る製品がわずか数万円で買えるのだから驚きである。一般的なデジタルカメラで撮影した画像よりも高画質なスキャンデータが得られるため、写真入りのプレゼン資料の制作には最適である。また、ネガ、ポジフィルムからビデオ出力の得られる製品もあり、液晶プロジェクターと共に使えば、従来のスライドをオンラインプレゼンテーションの一環として使うことも出来る。 書画カメラと呼ばれる、書類などをプレゼンテーションするための機器も入力機器の一種であるが、ハイビジョン対応のハイエンド機から、軽量、低価格の簡易型の製品まであり、液晶プロジェクターと組み合わせて使うと便利である。
電子会議システムには感圧式の入力ボードが使われている。これは、ホワイトボード状の感圧式入力ボードにパソコン画面を液晶プロジェクターで投影して、画面上に手書きで記入したり、パソコン操作の出来るものである。実際には、手書きによる感圧式入力ボードへの入力はシリアルインターフェースでパソコンに送られ、液晶プロジェクターによる投影画面に反映され、あたかもボードに書いた様に見える。このシステムは遠隔会議にも使用でき、相手側とボードを共有して作業が出来る。

さて、デジタルカメラについては現在最も進化の著しい製品の一つであり、解像度、記録方式も各社各様である。現在640X480ドットの解像度で30枚ほどの撮影が出来る製品が標準的である。記録方式は内蔵フラッシュメモリーに記録するタイプ、メモリーカードに記録するタイプ、FD、MD、HDに記録するタイプに分けられる。出張などでかなりの撮影枚数が必要な場合は、メモリーカードなど外部メモリーを追加出来るタイプの方が実用的である。パソコンとのインターフェースが、双方向転送の出来るタイプであれば、パソコンで編集したデータをデジタルカメラに送り、客先でモニターに接続してスライドショーを行うことも出来る。また10万円を少し超す製品では、長辺方向で1,000ドット以上の解像度の製品もあり、これは従来のプロ用に迫る画質が得られ、DTP用途にも対応出来る。パソコンインターフェースの他、ビデオ出力を備えている製品も多いので、液晶プロジェクターを使ったプレゼンテーションでは、パソコンからのプレゼンテーションの途中で、デジタルカメラからのビデオ入力に切り替えて画像を投影することも出来る。また、出張先で撮影した画像を、専用の通信アダプターやインターネットにより伝送して、本社でのプレゼンテーションに間に合わせると言ったことも出来る。デジタルカメラで撮影した画像を紙に出力する際には、小型の熱昇華型プリンターを用いるケースが多い。殆どのデジタルカメラメーカーでは専用のA6サイズ程のプリンターを用意している。配布資料の制作などで、プレゼンソフト上でレイアウトする時間がない場合、プリント出力を資料に貼り込み、カラーコピーして間にあわす方法もある。

次に、プレゼン資料を出力、投影するためのツールを見てみよう。 スライドを作成するためのフィルムレコーダーは、デジタル撮影方式とアナログ撮影方式がある。一般的なビジネススライドを制作する場合はデジタル撮影方式を用いる。フィルムレコーダーにより撮影されたスライドは、長辺方向で4000ドット以上の解像度を持っているため、精密な図面等を投影する場合には最適である。このため、現在でも学会発表ではスライドが圧倒的に使われている。また米国では、スライド文化とも言えるほどビジネスプレゼンテーションに於いてスライドが使われるケースが多く、フィルムレコーダーの普及も日本とは桁違いに多い。日本国内では、Macintoshの普及と共に、医療機関を中心に導入されたが、一般のオフィスで見かけることはまず無い。最近では、液晶プロジェクターの台頭により需要は伸び悩み、オフィスへの導入はあまり見込まれない。製品の価格は、50万円から数百万円の高価なものである。もし海外出張などでスライドが必要になった場合は、出力サービスの業者を利用した方が得策だろう。今後は、高解像度の製品が、印刷原稿用、商業写真用、デジタルミニラボでの出力用などとして使われていくと思われる。

カラープリンターは、OHPフィルム、ポスターなどのプレゼンテーション資料作成には欠かせないものである。以前は美しいプリント出力を得るためには、高価なプリンターを利用するしか方法が無かったが、この数年の技術の進歩は著しく、数万円のプリンターでも写真に近い画質でプリント出来るまでになってきた。
特に、インクジェット方式の進歩はめざましく、高画質出力方式として代表的な昇華型熱転写方式にも引けを取らない出力が得られる製品も出てきた。専用のフィルムを使えば美しいOHPフィルムも手軽に制作出来る。この専用のフィルムという点がポイントで、メーカーではインクに適したフィルムを開発しているので、これを利用すれば最良の出力結果が得られる。また、A3サイズの出力機を使えば、カラーカンプなども簡単に制作出来る。多少時間はかかるが、ソフトウェアRIPによりポストスクリプトデータが出力出来る製品もある。
熱転写方式では、溶融型ながら転写インクのドットサイズの制御により、昇華型に近い階調を出せる製品も出てきた。ランニングコストも昇華型に比較して遥かに安い。
レーザー方式は、今後のオフィスユースプリンターの本命である。各メーカーとも開発に力を入れていて、実売価格で50万円以下の製品も出てきた。レーザー方式の最大の特長は生産性の良さとランニングコストの安さである。データ転送の時間を除けば、毎分数枚の高速プリントが出来る。このため、多人数への配布資料などを作るには最適である。画質の点もビジネスプレゼン用途としては十分なものだ。普通紙が使えるためランニングコストは非常に安い。OHPフィルムへの出力も黒色がクッキリして昇華方式よりも鮮明である。

次に、オンラインプレゼンテーションの主役、液晶プロジェクターについて解説する。 液晶プロジェクターは、パソコンの画面を直接大画面に投影出来るため、フィルム等の媒体を介する必要がなく、非常に効率的である。製品自体はかなり以前からあるが、パソコンブームにより、RGB信号対応の製品が急速にシェアを伸ばし、このところ国内メーカーによる新製品の発表が相次いでいる。現在、国内メーカーだけでもOEMを含めて20社以上が参入して激しい開発、販売競争を繰り広げている。今後、年間数万台の規模で出荷が続くと見られ、スライドプロジェクター、OHPに取って代わることが予想される。価格は、後述する標準的なスペックの製品で50〜100万円ほどである。
液晶プロジェクターの構造例を(図 ) に示す。光源からの光はダイクロイックミラーにより、RGB3原色に分離され、RGB各々の信号のデータが表示された液晶パネルを透過後、再びダイクロイックミラーにより合成されてプロジェクションレンズから拡大投影される。このため、従来の三管式プロジェクターの様に設置時にコンバージェンス調整の必要もなく、地磁気の影響も受けない。

液晶プロジェクターのメリットは次の様な点だ。
・ スライド、OHPの様にフィルムを作る必要がない。
・ 輝度が高く、明るい部屋でも投影出来る。
・ パソコンの動画データを表示出来る。
・ インタラクティブなプレゼンテーションが出来る。
・ プレゼンテーション内容の変更が容易である。
・ ビデオ映像も投影出来る。
・ 小型、軽量である。
・ 設置、調整が容易である。

液晶プロジェクターの用途は、ビジネスプレゼンテーション用としては、社内会議、セールスプロモーション、社内教育、電子会議での画面投影など、 その他の用途としては、店舗 ショールームでの販促、教育現場、展示会 イベントの集客用などがある。

液晶プロジェクター選択のポイントは、
・ パソコンとの対応(画素数、水平同期周波数など)
・ 投影画面の明るさ(光出力)、均一性(周辺光量比)
・ 色再現性
・ リモコン、ポインティングツールの操作性
・ ランプの種類(メタルハライドランプまたは、ハロゲンランプ)、寿命
・ 重量、携帯性
・ 価格
等である。

現在主流である50〜100万円ほどの液晶プロジェクターの標準的な仕様は次の通りである。
・ 液晶パネル ポリシリコン、またはアモルファス
・ 画素数   800 X 600ドット(SVGA対応)
・ 駆動方式  TFTアクティブマトリクス
・ 入力信号  RGB、NTSCほか
・ 光出力   500〜1000ANSIルーメン
・ 光源    150〜350Wメタルハライドランプ
・ 投影サイズ 20〜200インチ
・ 重量    5〜15kg
光出力については、米国国家規格協会に準ずる測定値であるANSIルーメン表示が標準になりつつあるが、これは、画面上9個所の測定点の平均照度を示したものである。

その他、各社製品の個別な特長としては
・ XGA信号(1024 X 768ドット)への対応
・ 画面の上下移動機能、ひずみ補正機能
・ リモコンによるポインティング機能、レーザーポインターの内蔵
・ 電動ズーム、電動フォーカス
・ 画面のフリーズ機能、部分拡大機能
・ 書画カメラ機能内蔵
・ 超軽量(4.2Kg)、低価格(24万円)
等がある。

最近の傾向としては、液晶パネルについてはポリシリコンタイプが増えて来た。
これは、従来のアモルファスタイプに比べ小型、高解像度化出来る、応答速度が速いなどのメリットがあるため多くのメーカーが採用している。解像度は、現在SVGAリアルモード(液晶パネルそのものの画素数で投影すること)が主流だが、先日、XGAリアルモードの製品が発表され、今秋には各メーカーの製品が出揃うだろう。
また投影画面の明るさについても、ランプ、インテグレーションレンズ等の光学系の改良により明室使用も出来るほどになって来た。現状では多少部屋の照度を落とした状態での使用が望ましいが、これはまた画面への注目度を増す意味でも効果的である。最近では、低価格ながら従来の業務用機種にも迫る1000ANSIルーメンもの明るさの製品もある。このクラスでは、200インチのサイズで投影しても十分な照度が得られる。

さて、ここに来て新たなプロジェクターも登場して来た。DLPプロジェクターは、米TI社が開発したDMD(Digital Micromirror Device)を使った全く新しい投影方式のプロジェクターである。DMDは一言でいえば、微小可動ミラーを敷き詰めた半導体光スイッチである。SRAM(Static Random Access Memory)の1セル毎の上に形成されたアルミ合金の16μm角微小ミラーは、オン、オフ状態で±10度の傾きを持つ。これは、直下に配置されたメモリー素子による静電界作用により、支柱に取り付けられたミラーが動作する構造になっている。このミラーが1チップ上に848X600以上集積されていて、最大のものは230万以上の集積度を持つ。各ミラーのスイッチングスピードは毎秒50万回以上であり、チップに入射した光は各ミラー毎にデジタル制御される。このため、スイッチングレシオを変えることにより、反射光にデジタルグレイスケールが得られる。
つまり、光を完全なデジタル制御することになり、従来のモニターの様に、コンピューターのデジタル信号をD/A変換器により輝度信号に変換するプロセスが不要になる。プロジェクターに利用するには、1〜3チップを利用する方法がある。1チップ方式では、光源からの光を、RGBのロータリーカラーフィルターを透過させた後、DMDに入射させる。DMDでは、RGB各色光に同期したデータがSRAMに書き込まれ、チップで反射された光束は画像を形成する。実際の製品では、ロータリーカラーフィルターを手動で取り外して、高輝度のモノクロ投影が出来るものもある。3チップ方式では、光源からの光をプリズムにより分光して、各DMDに入射する。その反射光を合成して投影する方式で、より強力な光出力が得られる。

液晶方式と比較したDLP方式のメリットは次の点である。
・ 完全なデジタル制御なので色再現性が良い。
・ シームレスな画像が得られる。(高開口率である。)
・ 応答速度が速いため、スムーズな動画が得られる。
・ AD/DA変換が不要なためノイズの影響がない。
・ 解像度が高くなるにつれ、チップ面積が大きくなる(ミラー数が増える)ため高輝度化出来る。

このDLP方式は、高輝度、高精細画像が得られることから、今後、HDTVや、XGA、SXGA対応の大画面プロジェクターとして普及していくと思われる。明室での大画面投影が出来るため、大規模なビジネスプレゼンテーション用ディスプレイとしても最適である。
現在、ビジネスプレゼンテーション用の小型DLPプロジェクターは、すべて外国製である。国内では、液晶プロジェクターが圧倒的なシェアーを持っているが、やがて国産化、低価格化により台頭してくる可能性が高い。
プロジェクターの導入時には、カタログ上のスペックに惑わされず、出来ればショールームなどで実際のデータを持ち込んで投影してみると良い。しかし、製品毎の比較となるとなかなか容易ではないが、レンタル会社などでは各社プロジェクターの比較投影会を行うこともあり、参考にすると良い。

投影するスクリーンについても導入に際しては十分に検討する必要がある。一般的に使われている樹脂性のホワイトスクリーンの他に、ビーズスクリーン、アルミ蒸着スクリーンなどがあり、後者ほど明るくコントラストの高い画面が得られるが、指向性が強くなり角度がつくと見にくくなる。サイズは60〜100インチほどが一般的で、巻取り式と固定式がある。変わったところでは、液晶プロジェクター本体との携帯性を考えて分解するとB4サイズに収納出来るスクリーンもある。20〜30人相手のプレゼンテーションでは、60インチほどの自立型の巻取り式スクリーンが携帯も容易で使い易い。

最後に、大画面RGBモニターとして、プラズマディスプレイについて取り上げる。

薄型平面ディスプレイは、各種方式により開発が行われているが、液晶ディスプレイの大型化が滞っているなか、40インチ以上のサイズでは、プラズマディスプレイが各社から製品化されている。プラズマディスプレイの原理は、RGBの微少な蛍光灯を並べた様なものだが、自発光型であるため輝度が非常に高く、視野角も広く、20〜30人を収容する会議室の常設モニターとしても最適である。現状での解像度は、VGAとSVGAの中間位だが、いずれ高解像度化が進むだろう。欠点は、高価格な点と、見かけのわりに重い点である。

プレゼンテーションツールは、今後液晶プロジェクターを中心に、よりダイナミックなプレゼンテーションをサポート出来る様になっていくだろう。しかし、これらの高性能なツールを使ってもプレゼンテーションのコンテンツが伴わなければ何の意味もない。
マルチメディアコンテンツの制作にあたっては、動画、静止画、音声などを手際よくまとめなければならない。最近のプレゼンテーションソフトは、少し前のマルチメディアオーサリングソフトにも匹敵する機能を持っているが、実際にコンテンツを制作するのはかなり大変な作業であり、インターネットのホームページ制作と同様に、内容と共にセンスも問われるものである。


                   

 










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