日刊工業新聞 1996年9月20日付け記事
「プレゼンテーションツールの動向」

この1、2年プレゼンテーションツールにも革命の波が押し寄せている。デスクトッププレゼンテーション(DTPR)の主役であるパソコンの開発競争はとどまる所を知らないが、その周辺機器としてのプレゼンテーションツールも新旧の世代交代が著しい。例えば、従来のプレゼンテーションの主役であったスライドやOHPフィルムを、オフラインのプレゼンテーション手法とすれば、液晶プロジェクターを使ったそれは、オンラインプレゼンテーションといえる。そして、プレゼンテーションのためのデータ(コンテンツ)は、スライドやOHPなどの固定したフィルムから、インターネットなどを利用したよりダイナミックなマルチメディアコンテンツに変わっていくと予想される。また、制作をサポートするソフトウエアもかなり出揃ってきた。この様な現状から、今後、スライドを作るためのデジタルフィルムレコーダーの普及はあまり期待されない。代わりに液晶プロジェクターの普及が著しく、プレゼンテーションツールの代表格になりつつある。また、液晶以外の新方式のプロジェクターも製品化されたり、従来のプレゼンテーションソフトのインターネットサポート機能が充実されるなど、オンラインプレゼンテーション化の流れは顕著になってきている。コンテンツに用いる画像の入力についても、つい先日まではスキャナーによる取り込みが唯一のものだったが、デジタルカメラの普及により手軽に出来るようになった。入力機器としてのデジタルカメラ、出力機器としての液晶プロジェクターは、最近のDTPRのトレンドでもあるが、ビジネスプレゼンツールとして購入するのであれば、あまりハイスペックのものは必要でない。それよりも、これらの機器やサポートソフトを駆使して、いかに充実した内容のプレゼンテーションを行うかに注力したほうが良いだろう。



昨年来のインターネットブームは、パソコンが一般家庭に普及するに従ってより身近になってきた。プロバイダーへの申し込みは急増し、アクセスの殺到によりサーバーがパンクするケースも多々あるようだ。また、家電メーカーではインターネットアクセス可能なテレビを、最新の情報端末と位置づけ、こぞって製品化している。確かに、現在のパソコンは操作が簡単になったとは言え、家電製品に比べればまだまだ難しい機械である。今後、パソコンと言う形態以外の情報家電品や、低価格のネットワークコンピュータ(NC)により、より多くの人々にインターネット環境が提供されるようになるだろう。 さて、インターネットとプレゼンテーションとの関係は、今後より密接なものになっていくことが予想される。インターネットでのホームページの公開は、まさに発信者のプレゼンテーションそのものである。WWWの発達により、インターラクティブなプレゼンテーションがオンライン上で可能になったことは素晴しいことである。この、インターネットプレゼンテーションをサポートするソフトウエアも続々と登場している。プレゼンテーションソフトにアドインする形式のものが多いが、例えば、マイクロソフト社のパワーポイント・インターネット・アシスタントでは、パワーポイントで作成した画面を、簡単にHTMLファイルに変換できるので、容易にWebページを作ることが出来る。インターネットを利用したプレゼンテーションのメリットは、何といっても膨大なデータを自由に検索出来ることだろう。自分のホームページだけでなく、関連するデータを自由に引き出せるメリットは計り知れないものがある。ただし、現状では回線の接続スピードが遅い場合が多いので実用的とは言えないが、いずれプレゼンテーション会場にISDN回線や、専用線が引かれていることが常識になってくるだろう。 次に、プレゼンテーションツールの最近の動向を見てみよう。 デジタルカメラはプレゼンテーションツールとしても多いに普及が期待される。メーカーが推奨しているように、企画書や出張報告書などに写真を取り込む場合には最適なツールである。また、インターネットへの応用では、撮影してすぐにホームページの写真を入れ替える、と言ったことも出来る。この数ヵ月は、新製品の発表ラッシュであり、購入の際の選択の幅が広がってきた。機能的には、内部のフラッシュメモリーに640X480ドットの解像度で記録するタイプが標準的で、撮影枚数は30〜60枚ほど、価格は6〜8万円ほどである。パソコンへのデータ転送はRS-232Cによりシリアル転送されるものが多い。プレゼンテーション資料への画像貼り込み用としてはこれ位の性能で十分である。 また10万円を少し超す製品では、水平方向で1,000ドットを超す解像度の製品もあり、これは従来のプロ用に迫る画質が得られ、DTP用途にも対応出来る。パソコンインターフェースの他、ビデオ出力を備えている製品も多いので、後述する液晶プロジェクターを使ったプレゼンテーションでは、パソコンデータからのプレゼンテーションの途中で、デジタルカメラからのビデオ入力に切り替えて画像を追加投影することも出来る。また、出張先で撮影した画像を、必要に応じて専用の通信アダプターやインターネットにより伝送して、本社でのプレゼンテーションに間に合わせると言ったことも出来る。デジタルカメラで撮影した画像を紙に出力する際には、小型の熱昇華型プリンターを用いるケースが多い。殆どのデジタルカメラメーカーでは専用のA6サイズ程のプリンターを用意している。 スライドを作成するためのデジタルフィルムレコーダーは、ビジネスプレゼン用途としての販売は伸び悩んでいる。最近は、液晶プロジェクターの急速な普及のため、スライドを用いたプレゼンテーション自体が減る傾向にある。これはパソコンによるスライド制作を行ってきた筆者がひしひしと感じているところである。医療機関、研究所では、マッキントッシュと共に普及したフィルムレコーダーも、一般オフィスでは現像が必要な面倒な機械として敬遠されてしまう。現に、輸入代理店などでは販売に消極的になっているところもある。今後は、高解像度の製品が、印刷原稿用、商業写真用、デジタルミニラボでの出力用などとして使われていくと思われる。低価格フィルムレコーダーについては、この半年ほどはほとんど動きがないのが現状である。 次に、最も普及が期待される液晶プロジェクターの状況を見てみよう。現在殆どのメーカーからは、第二、第三世代の製品が出荷されているが、その性能は確実に向上している。例えば、投影時の明るさの基準であるANSIルーメン値で見ても、少し前は200〜300ANSIルーメン程の 製品が多かったが、最近では400ANSIルーメン以上の製品が増えている。これにより、高反射スクリーンを使えば明室でも十分使用出来る。また、最近では、ノートパソコンでもSVGA(800X600)モードで表示出来るため、これに対応した製品も増えてきた。以前からSVGA対応の製品はあるが、殆どはVGA画素の液晶パネルを使い、SVGA映像を間引いて投影するなどしていた。しかし、最近では、SVGA画素の液晶パネルを使いリアルモードで投影出来る製品も出てきた。来年には、殆どの製品がSVGA対応に移行していくものと思われる。 さて、ここに来て新たなプロジェクターも登場して来た。毎年、米国で開催されているInfocommは総合的な映像システムのショーだが、その中でも、各種プロジェクターの比較投影会であるShoot-Outは最新機種が一同に会する催しである。そこで、注目を集めたのがDLP(Digital Light Processing)方式を使ったプロジェクターである。DLPは、米TI社が開発したDMD(Digital Micromirror Device)を使った全く新しい投影方式のプロジェクターである。DMDは一言でいえば、微小可動ミラーを敷き詰めた半導体光スイッチである。SRAM(Static Random Access Memory)の1セル毎の上に形成されたアルミ合金の16μm角微小ミラーは、オン、オフ状態で±10度の傾きを持つ。これは、直下に配置されたメモリー素子による静電界作用により、支柱に取り付けられたミラーが動作する構造になっている。このミラーが1チップ上に848X600以上集積されていて、最大のものは230万以上の集積度を持つ。各ミラーのスイッチングスピードは毎秒50万回以上であり、チップに入射した光は1ミラー毎にデジタル制御される。このため、スイッチングレシオを変えることにより、反射光にデジタルグレイスケールが得られる。つまり、光を完全なデジタル制御することになり、従来のモニターの様に、コンピューターのデジタル信号をD/A変換器により輝度信号に変換するプロセスが不要になる。プロジェクターに利用するには、1〜3チップを利用する方法がある。1チップ方式では、光源からの光を、RGBのロータリーカラーフィルターを透過させた後、DMDに入射させる。DMDでは、RGB各色光に同期したデータがSRAMに書き込まれ、チップで反射された光束は画像を形成する。実際の製品では、ロータリーカラーフィルターを手動で取り外して、高輝度のモノクロ投影が出来るものもある。3チップ方式では、光源からの光をプリズムにより分光して、各DMDに入射する。その反射光を合成して投影する方式で、より強力な光出力が得られる。

液晶方式と比較したDLP方式のメリットは次の点である。

・ 完全なデジタル制御なので色再現性が良い。

・ シームレスな画像が得られる。(高開口率である。)

・ AD/DA変換が不要なためノイズの影響がない。

・ 高い光出力が得られる。(偏光フィルターなどによる光ロスがない。)

このDLP方式は、高輝度、高精彩画像が得られることから、今後、HDTVや、XGA、SXGA対応の大画面プロジェクターとして普及していくと思われる。明室での大画面投影が出来るため、大規模なビジネスプレゼンテーション用ディスプレイとしても最適である。今後、光のフルデジタル制御は思いもかけない製品を生み出して来るかもしれない。 さて、話を再び液晶プロジェクターにもどす。液晶プロジェクターはプレゼンテーションツールとしては新しいものであり、導入に当たってはカタログで仕様を比較して決定しているケースも多い。店頭での比較もなかなか難しく、購入基準が定めにくいのが現状である。今回、日刊工業新聞社が9月24日〜27日、東京ビックサイトで開催するプレゼンテーションツールトレードフェア'96では、液晶プロジェクターの比較投影会を行うことにした。(投影会は26日、27日のみ)一般対象の比較投影会としては、国内初の催しであり、国内外有力メーカー11社が参加する。今回の投影会の特長としては、液晶プロジェクターをビジネスプレゼンツールとして位置付け、パソコンからのRGB信号による投影を主体に行う。また、価格はすべて100万円以下の製品である。入力信号、スクリーン、室内環境まですべて同一条件にした投影会であり、各メーカーの製品がどのような特長を発揮するか大いに期待される。

菊 川 誠 之

 




[液晶プロジェクタープレゼンツールご購入案内イベント情報コンサルティングセミナー案内スライド出力ポスター出力料金表マルチメディアホームページ制作What is CMFスライドギャラリーBOOKSDTPRとは日刊工業記事サンプルスライド会社案内コーヒーブレーク]