日経MAC 1998年9月号記事

「プロジェクター特集」


              (注:原文のため多少内容が異なります。図は省略します。)



10年一昔というが、10年前に登場したMACIIのインパクトは強烈なものだった。特に、操作性の良さ、画面の美しさは、それまでの国産パソコンとは一線を画するものだった。その1年ほど前から出力サービスを始めた当社では、主にプレゼンテーション用のスライドの制作、出力を主体に営業していた。当初は、国産パソコンにアナログフィルムレコーダーの組み合わせでスライドを制作していたが、パソコンのRGB出力を取り込んで露光するアナログフィルムレコーダーでは、画面の解像度以上のスライドを作ることは出来なかった。MACIIの発売と同じ頃、米国ではデスクトップ型のデジタルフィルムレコーダーが開発された。これは、出力機器の精度に依存して出力できるMACの特長をフルに利用したものだった。35mmスライドの長手方向で4000ドット以上の精度で撮影出来るため、ビジネスプレゼン用としては十分なものだった。スライド文化全盛の米国では、その後各種のデジタルフィルムレコーダーが開発され普及していった。これと時を同じくして、プレゼンテーションソフトAldus Persuasionが発売された。このソフトは操作性の良さから圧倒的な支持を得て、プレゼンソフトの代名詞となった。即ち、MAC、デジタルフィルムレコーダー、Persuasionの組み合わせがスライド制作の定番となり、デスクトッププレゼンテーション(DTPR)の王道となった。この組み合わせは、数年遅れて日本でも受け入れられ、医学会、各種研究発表などでもてはやされた。しかし、一般企業のビジネスプレゼンでのスライドの利用は、外資系の企業などごく一部に留まっていた。この原因は、日本ではプレゼンテーションには、スライドよりもOHPが使われる傾向が強かったためだ。OHPはフィルムに手書きして作ることが出来るので昔からプレゼンの常套手段であった。しかし、パソコンにより制作するのは意外に難しく、プリンターの出力方式や、フィルムの選択により出来が左右され、見栄えのするOHPフィルムを作ろうと出力サービスに頼めばコストもばかにならなかった。

このように、パソコンで制作したデータをフィルムに出力してプレゼンテーションに利用する方法は、オフラインプレゼンテーションといえるが、これに対してパソコンの画面を直接大画面に投影してプレゼンテーションする方法が7〜8年前から使われ出した。これは、パソコンと投影装置を直結することから、オンラインプレゼンテーションといえるもので、スライド、OHPと違い、フィルムを作るコスト、時間がかからない。また、プレゼンテーションに動きをつけられること、投影データの修正が容易なことが最大のメリットである。これにより棒グラフを順に伸ばしたり、機械の動きをアニメーションにして見せたりすることも出来る。また、ビデオ、サウンドを取り込んでマルチメディアプレゼンテーション化することも出来る。 電子OHPは初期のオンラインプレゼンテーションツールの代表的なもので、液晶パネルを既存のOHPの上に置いて投影する装置である。液晶パネルはパソコンとRGB接続して、その画面が表示され、OHPにより拡大投影される。電子OHP自体は軽く、携帯にも便利だが、必ずOHPが必要である。また、カラー対応機ではパネルの透過率が良くないため明るい画像が得られなかった。このため、それほど普及することなく、液晶プロジェクターに道を譲ることになった。液晶プロジェクターはこの電子OHPと、OHP本体の光源を一体化させた様な装置であり、軽量ながら、投影画像は明るく、取り扱いも容易である。

液晶プロジェクターの構造例を図 1 に示す。光源からの光はダイクロイックミラーにより、RGB3原色に分離され各々の液晶パネルを透過後、ダイクロイックプリズムにより合成されてプロジェクションレンズから投影される。このため、従来の三管式プロジェクターの様に設置時にコンバージェンス調整の必要もなく、地磁気の影響も受けない。 液晶パネルには、高密度で応答速度の速いポリシリコンタイプが主に使われている。

現在主流である50〜100万円ほどの液晶プロジェクターの標準的な仕様は次の通りである。

・ 液晶パネル ポリシリコンTFTアクティブマトリックス方式
・ 解像度   800 X 600ドット(SVGA対応)、または1024 X 768ドット(XGA対応)
・ 入力信号  RGB、NTSCほか
・ 光出力   500〜1200ANSIルーメン
・ 光源    150〜350Wメタルハライドランプ、または120〜150W UHP(Ultra High Power)ランプ
・ 投影サイズ 20〜300インチ
・ 重量    5〜15kg

光出力については、米国国家規格協会に準ずる測定値であるANSIルーメン表示が標準になりつつあるが、これは、画面上9個所の測定点の平均照度を示したものである。 液晶パネルの大きさは、従来1.3インチが主流であったが、このところ、より光学系をより小さく出来る0.9インチの液晶パネルを使った製品が登場してきた。

次に、液晶プロジェクター導入時の選択のポイントは、以下の点である。

・ パソコンとの対応

使用するパソコンの解像度により。最適な液晶プロジェクターを選択する必要がある。 最近のプロジェクターは、CRT同様マルチスキャン方式になっているので、RGB入力のソースが変わっても、殆どの 場合、自動的に映像信号に同期して最適な映像が投影出来る。 また、圧縮機能により、液晶パネル自体の解像度より1クラス上の解像度の映像を投影出来る機種が多いが、 (例えば、800X600ドットの液晶パネルを使ったSVGA対応機でも、XGA映像を圧縮投影できる) この機能は、製品により投影映像の画質に差があるので、事前に確認したほうが良い。 最も無難な方法は、パソコンと同じ解像度の液晶パネルを持つリアルモード対応の製品を選択すると良い。

・ 投影画面の明るさ

明るい部屋、大きな部屋で使用する場合は、高輝度プロジェクターが良い。一般的に50人ほどまでを対象とした プレゼンで、部屋を多少暗く出来るなら500ANSIルーメン以上あれば十分である。また、最近の1000ANSIルーメン 以上の製品では、150〜200インチほどに投影して数百人を対象にしたプレゼンでも使える。 明るさは、スクリーンによってもかなり異なるので、低輝度のプロジェクターを使う場合には、ビーズスクリーン等 反射率(スクリーンゲイン)の高いスクリーンを使うと良い。

・ 色再現性

液晶プロジェクターは、液晶パネルの透過光を制御して映像を作っているため、完全な遮光は難しく、黒の再現性は あまり良くない。また、濃いグレーの階調の再現も難しい。しかし、最近では、コントラスト比で300:1の製品も あり、徐々に改善されている。また、明るさを優先して、白に近い薄い色が飽和して再現出来ない場合もある。 この辺は、CRTモニターと比較したり、比較投影会などで、実際の画面を見て確認すると良い。 また、ビデオ映像は、ガンマ補正回路、各種フィルターの有無によりかなり画質に差が出るので同様の注意が必要だ。

・ 重量、携帯性

実際の使用状況を考慮して選択する必要がある。据え置きで使うか、持ち運んで使うかにより吟味する。 据え置き使用で、天井から吊り下げて使用する場合には、重量、金具、反転使用の可否も調べる。 持ち運ぶ場合には、6〜7kg以下の製品が良いが、キャスターの付いたキャリングケースでの移動は、振動試験を している様なもので、あまりお薦め出来ない。 常時持ち運ぶとなると、5kg以下のウルトラポータブルと呼ばれる製品が良い。後述するDLP(Digital Light Processing)方式のプロジェクターが先鞭をつけたが、 液晶方式も0.9インチパネルの製品で巻き返しを図って 来た。最近の製品では、SVGA対応、明るさ600ANSIルーメン以上、重さも4kgほ どで、ノートパソコンと 共に携帯しても苦にならないものもある。今秋には各社の製品が出荷され、DLP方式の製品と棲み分けされて いくだろう。

・ 価格

現在、XGA対応の製品は、100万円以上の製品が多く、かなり高価である。特に高解像度を求めないのならば、 SVGA対応の製品でも十分使える。これなら80万円を切る製品もかなりあり、明るさも十分で、ビジネスプレゼン 用 には最適だ。また、ウルトラポータブルプロジェクターは、モバイルプレゼンテーションの必須アイテムになりつつ あるが、現状のネックは価格である。定価で50万円を切れば、サブノートパソコンと組み合わせて、営業マンが持 ち歩くケースも増えそうだ。

・ その他の確認すべき機能

ズーム機能:投影画面の拡大縮小機能。電動も良いが、手動でも十分。 部分拡大機能:画面の任意の部分を拡大投影する機能。製品により操作性、拡大率に差がある。 リモコンによるポインティング機能:マウスの操作がリモコンから行える機能。一部ない製品もある。 レンズシフト機能:投影画面を歪ませないで、上下出来る機能。天吊り使用時には便利。 リサイズ機能:異なる解像度の映像を、圧縮または拡大してフルサイズに投影する機能。

液晶方式には、他に反射型パネルを使った製品もある。これは、液晶パネルの裏面がアルミニウム反射鏡になっていて、ここに加わる電圧により、液晶が制御される。光源からの光はビームスプリッターから、液晶を通り、反射され、再度液晶を通り投射光となる。図2にその原理を示す。透過型でネックとなる駆動用の回路、配線部分は反射鏡の裏にあるので、90%以上の高開口率が得られる。基本的に解像度を上げても開口率はあまり下がらず、これにより、高輝度、高精度の映像再現が可能になる。後述するDLP方式との違いは、反射鏡が動かない点である。反射型液晶パネルを使った製品は、素子の歩留まりがネックになっていたが、現在数社から製品が出荷されていて、1000ANSIルーメンの明るさで、SXGA(1280X1024)対応の製品もある。今後、反射型の特長を生かした、更に高性能なプロジェクターが開発される可能性が大きい。

このように液晶プロジェクターは、デジタルプレゼンテーションを行う上で要となるツールであるが、液晶方式を代表とするパソコンの画面を投影出来るプロジェクターは一般にデータプロジェクターと呼ばれている。データプロジェクターは、近年のパソコンの普及に伴い、急速に出荷台数が増加している。98年度は国内だけで5万台以上の出荷が予想され、この数年前年比150%ほどで増加している。現在、SVGA対応機からXGA対応機への移行期にあるが、来年度はXGA対応機の出荷台数がSVGA対応機の出荷台数を上回ると予想される。今後は、CAD、CAMのユーザーなど高精細画面が必要なユーザーには、更に高解像度のSXGA対応の製品も普及するだろうが、PowerPointなどを使った一般的なビジネスプレゼンでは、SVGAの製品で十分である。

次に、DLPプロジェクターは、米TI社が開発したDMD(Digital Micromirror Device)を使った全く新しい投影方式のプロジェクターである。DMDは一言でいえば、微小可動ミラーを敷き詰めた半導体光スイッチ機能を持つチップである。プロジェクターに利用するには、1〜3チップを利用する方法がある。1チップ方式では、光源からの光を、RGBのロータリーカラーフィルターを透過させた後、DMDに入射させる。DMDでは、RGB各色光に同期したデータがDMDチップに書き込まれ、反射された光束は画像を形成する。図3にその構造を示す。この方式は、プロジェクターを小型化出来る特長がある。最近では、3Kgで700ANSIルーメンの明るさの製品も出てきた。 3チップ方式では、光源からの光をプリズムにより分光して、各DMDに入射する。その反射光を合成して投影する方式で、より強力な光出力が得られる。この方式では、光出力1000ANSIルーメン以上の大型の製品が多い。

液晶方式と比較したDLP方式のメリットは次の点である。

・ 完全なデジタル制御なので色再現性が良い。
・ シームレスな画像が得られる。(高開口率である。)
・ 高い光出力が得られる。(偏光フィルターなどによる光ロスがない。)

このDLP方式は、高輝度、高精彩画像が得られることから、1チップ方式はモバイルプロジェクター、3チップ方式はシアター用プロジェクター等に各々の方式の特長を生かして製品化されている。0.9インチパネルの液晶プロジェクターが肉薄しているモバイル分野では、DLPプロジェクターは更に軽い2kg台のウルトラウルトラポータブルプロジェクターが開発される可能性もある。また、XGA対応機も今秋には出荷されそうだ。

このようにデータプロジェクターは、各種方式が混在しているが、現在のところ透過型液晶パネルを使った製品が 8割以上を占め、DLP方式がそれについでいる。今後、解像度についてはビジネスプレゼン用としてはSXGA対応までで頭打ちとなり、明るさは1000ANSIルーメン台の製品が増えそうだ。その後は画質の勝負になり、いかにコントラスト、階調を良くするかといった点で差別化されるだろう。具体的には、プレゼン画面中の写真、デジタルビデオの画像等がどれだけ美しく再現出来るか、といった所がポイントになるだろう。これは、ビデオ入力についても同様である。XGA対応、1000ANSIルーメンで5kg以下の製品まで出てきた現在、データプロジェクターは、解像度、明るさ、重さがテーマだった時代から、画質が重視される時代に移りつつある。  










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